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AC DCコンタクタの違いを徹底解説!選定で失敗しないための完全ガイド

2025/07/07

ACとDCコンタクタの違い、正しく理解できていますか?この記事では、制御コイルの動作原理から主接点のアーク消弧能力、定格、用途まで、両者の決定的な違いを徹底解説。使い分けの理由を明確にし、最適なコンタクタ選定ポイントを網羅的に解説します。AC/DCコンタクタの相互利用の可否など疑問も解消。適切なコンタクタ選びで設備トラブルを防ぎ、安全で信頼性の高い電気設備を実現する知識が得られます。

1. AC DCコンタクタとは?基本を理解する

電気回路の開閉において、手動での操作では危険が伴ったり、頻繁な操作が困難な場合があります。そこで活躍するのがコンタクタ(電磁接触器)です。コンタクタは、電磁石の原理を利用して電気回路を遠隔で、あるいは自動で開閉するためのスイッチングデバイスであり、特に大きな電流を扱う産業用機械や設備で広く用いられています。

本章では、ACコンタクタとDCコンタクタそれぞれの基本的な役割と概要について解説し、その後の詳細な違いを理解するための土台を築きます。

1.1 コンタクタの基本的な役割

コンタクタの最も基本的な役割は、制御信号によって主回路の電気をオン・オフすることです。例えば、モーターを起動・停止させたり、ヒーターの電源を切り替えたりする際に使用されます。これは、小さな制御電流で大きな主回路電流を安全かつ確実に操作できるという大きなメリットがあります。

コンタクタは主に以下の要素で構成されています。

  • 制御コイル(電磁石):ここに電流を流すことで磁力を発生させ、接点を開閉する駆動力を生み出します。

  • 主接点:実際に大きな電流が流れる主回路の開閉を行う部分です。通常は3極(三相モーター用)や2極(単相用)などがあります。

  • 補助接点:主接点とは独立して動作し、シーケンス制御やインターロック、表示灯の点灯などに使われる、比較的小さな電流を扱う接点です。

  • 消弧装置:接点が開く際に発生するアーク(放電現象)を素早く消滅させ、接点の損傷を防ぐための重要な部分です。

これらの要素が連携して、安全で信頼性の高い電力制御を実現しています。

1.2 ACコンタクタの概要

ACコンタクタは、その名の通り交流(Alternating Current: AC)電源で動作する制御コイルを持ち、主に交流負荷の開閉に使用されるコンタクタです。産業分野で最も一般的に使用されており、三相交流モーターの制御、ヒーター、ポンプ、照明回路など、多岐にわたる交流駆動の設備に採用されています。

ACコンタクタの制御コイルは、交流電圧が印加されると励磁され、主接点を引き込みます。交流は周期的に電流の向きと大きさが変化するため、制御コイルの鉄心は交流磁界によって振動することがあり、これがいわゆる「うなり音」の原因となることがあります。また、接点が開く際に発生するアークは、交流の電流が周期的にゼロになる「ゼロクロス点」があるため、比較的自然に消弧しやすいという特性を持っています。

日本国内では、単相100V、200V、三相200V、400Vといった電圧の交流回路で使用されることが一般的です。

1.3 DCコンタクタの概要

DCコンタクタは、直流(Direct Current: DC)電源で動作する制御コイルを持ち、主に直流負荷の開閉に使用されるコンタクタです。交流に比べて使用される場面は限られますが、バッテリー駆動システム、太陽光発電システム、電気自動車(EV)、フォークリフト、直流モーターの制御、無停電電源装置(UPS)など、直流電源が主流となる分野で不可欠な役割を果たします。

DCコンタクタの制御コイルは、直流電圧が印加されると励磁されます。直流は電流の向きや大きさが一定であるため、交流コンタクタのようなうなり音は発生しません。しかし、直流回路では電流のゼロクロス点が存在しないため、接点が開く際に発生するアークが非常に消えにくく、長時間持続する傾向があります。このため、DCコンタクタは強力な消弧装置(例えば、永久磁石による磁気吹き消し方式など)を内蔵していることが大きな特徴です。

日本国内では、DC12V、24V、48V、100V、200Vといった電圧の直流回路で利用されています。

2. AC DCコンタクタの決定的な違いを徹底比較

ACコンタクタとDCコンタクタは、それぞれ交流回路と直流回路の特性に合わせて設計されており、その動作原理や構造には明確な違いがあります。ここでは、両者の決定的な違いを詳細に比較し、それぞれの特性を深く理解していきましょう。

2.1 制御コイルの動作原理の違い

コンタクタの開閉動作を司る制御コイルは、AC用とDC用でその特性が大きく異なります。この違いは、交流と直流の電気的性質に起因しています。

2.1.1 ACコイルの特性と仕組み

ACコンタクタの制御コイルは、交流電源で励磁されます。交流は周期的に電圧と電流が変化し、ゼロクロス点が存在するため、コイルの励磁力も周期的に変動します。この変動により、コイルが励磁される際に振動(チャタリング)が発生する可能性があります。

このチャタリングを防ぎ、安定した吸引力を得るために、ACコイルには短絡環(シェーディングコイル)と呼ばれる銅製のリングが鉄心に埋め込まれています。短絡環は、主磁束の変化によって誘導電流を発生させ、磁束の変動を打ち消すことで、吸引力の低下を防ぎ、接点の安定した閉鎖を維持する役割を果たします。また、ACコイルはDCコイルに比べて突入電流が大きく、定常電流も高くなる傾向があります。

2.1.2 DCコイルの特性と仕組み

DCコンタクタの制御コイルは、直流電源で励磁されます。直流は電圧と電流が一定であるため、コイルに印加される磁力も一定であり、原理的にチャタリングは発生しません。そのため、ACコイルのような短絡環は不要です。

しかし、DCコイルは直流電流が常に流れるため、コイルの励磁を停止した際に残留磁気が残りやすく、鉄心が完全に解放されずに接点が開かない、あるいは開くのが遅れるといった問題が発生する可能性があります。このため、一部のDCコンタクタでは、残留磁気を打ち消すための工夫が施されている場合があります。また、コイルの開閉時には逆起電力が発生するため、回路保護のためのダイオードなどが組み込まれることもあります。

比較項目

ACコンタクタ(制御コイル)

DCコンタクタ(制御コイル)

電源の種類

交流電源

直流電源

チャタリング対策

短絡環(シェーディングコイル)が必要

原理的に不要

残留磁気

ゼロクロス点で解消されやすい

発生しやすく、対策が必要な場合がある

突入電流

大きい

小さい

消費電力

大きい傾向

小さい傾向

逆起電力

問題になりにくい

発生しやすく、保護回路が必要な場合がある

2.2 主接点とアーク消弧能力の違い

コンタクタの主接点は、負荷電流を開閉する重要な部分であり、その開閉時に発生するアーク(放電)をいかに効率的に消弧するかが、コンタクタの寿命と信頼性を左右します。交流と直流ではアークの特性が異なるため、それぞれに特化した消弧能力が求められます。

2.2.1 AC接点のアーク消弧

ACコンタクタの主接点では、交流電流が周期的にゼロになるゼロクロス点が存在します。接点が開く際にアークが発生しても、電流がゼロになる瞬間にアークは自然に消滅しやすいという特性があります。このため、ACコンタクタのアーク消弧装置は、比較的簡易な構造で済みます。一般的には、アークを迅速に引き伸ばし、冷却することで消弧を促進するアークシュート(消弧グリッド)が用いられます。アークシュートは、アークを細分化し、冷却することで消弧効果を高めます。

2.2.2 DC接点のアーク消弧

DCコンタクタの主接点では、直流電流が常に一定方向に流れるため、電流のゼロクロス点が存在しません。このため、接点が開くとアークが持続しやすく、自然に消滅することが非常に困難です。DCアークは非常に強力で、接点の溶着や焼損を引き起こしやすいため、ACコンタクタよりもはるかに強力なアーク消弧能力が要求されます。

DCコンタクタでは、アークを磁力で吹き飛ばす磁気吹き消し方式や、複数の接点を直列に配置してアークを細分化する多段消弧方式、あるいはアークを冷却する特別な消弧室などが組み合わされて使用されます。特に高電圧・大電流のDC回路では、アークの制御が非常に重要となり、コンタクタのサイズもAC用より大きくなる傾向があります。

比較項目

ACコンタクタ(主接点)

DCコンタクタ(主接点)

電流のゼロクロス

存在する

存在しない

アークの持続性

短く、自然消弧しやすい

長く、自然消弧しにくい

アーク消弧方式

アークシュート(消弧グリッド)など比較的簡易

磁気吹き消し多段消弧など強力な方式が必要

接点への影響

比較的少ない

溶着や焼損のリスクが高い

コンタクタのサイズ

同定格電流でDCより小さい傾向

同定格電流でACより大きい傾向

2.3 定格電圧と電流の適用範囲の違い

ACコンタクタとDCコンタクタは、その設計思想とアーク消弧能力の違いから、適用できる定格電圧と電流の範囲にも差があります。

一般的に、ACコンタクタは幅広い電圧・電流範囲の交流負荷に対応しており、特に高電圧・大電流の三相モーター制御などに広く用いられます。日本国内では、200V、400V級の交流電圧が一般的であり、数アンペアから数百アンペア、あるいはそれ以上の電流に対応する製品が豊富に流通しています。

一方、DCコンタクタは、直流特有のアーク消弧の難しさから、同じ電流値でもACコンタクタよりも堅牢な設計が求められます。特に高電圧の直流回路では、アークを完全に消弧するための技術が非常に重要になります。DCコンタクタは、低電圧(例:12V、24V、48Vのバッテリーシステム)から、電気自動車(EV)の充電システム、太陽光発電(PV)システム、鉄道車両、大規模な直流配電システムなどで使用される高電圧(例:数百Vから1000V以上)まで、特定の直流電圧・電流範囲に特化した製品が多く見られます。同じ電流を開閉する場合でも、直流の方が接点や消弧装置の負担が大きいため、AC用よりも定格電流が低く設定されたり、サイズが大きくなったりする傾向があります。

2.4 AC DCコンタクタの用途の違い

ACコンタクタとDCコンタクタは、それぞれ異なる電気的特性を持つため、当然ながらその主要な用途も異なります。

ACコンタクタの主な用途は、交流電源を使用する一般的な産業機器や民生機器の制御です。具体的には、工場における三相誘導モーターの始動・停止制御、ヒーターや照明設備のオンオフ、変圧器の一次側開閉、ポンプやファンなどの動力源の制御など、交流負荷が中心となります。交流電源が普及している多くの産業分野で、ACコンタクタは不可欠な制御部品として利用されています。

一方、DCコンタクタの主な用途は、直流電源を使用する特殊なアプリケーションやシステムです。代表的なものとしては、バッテリーを電源とするフォークリフトや無人搬送車(AGV)などのバッテリー駆動システム、太陽光発電システムにおける直流電力の開閉、電気自動車(EV)の急速充電器内部の電力制御、鉄道車両の主回路や補助回路、電磁ブレーキの制御、通信機器の電源切り替えなどが挙げられます。近年、再生可能エネルギーの普及やEVの発展に伴い、高電圧・大電流に対応するDCコンタクタの需要が急速に拡大しています。

このように、使用する電源の種類(交流か直流か)によって、コンタクタの選定は明確に分かれます。それぞれの特性を理解し、適切なコンタクタを選ぶことが、システムの安定稼働と安全性を確保する上で極めて重要です。

3. なぜACとDCでコンタクタを使い分ける必要があるのか

交流(AC)と直流(DC)は、電気的な特性が根本的に異なり、この違いがコンタクタの設計と選定に決定的な影響を与えます。それぞれの電源特性に最適化されたコンタクタを使用しないと、機器の故障、性能低下、さらには火災や感電といった重大な事故につながる可能性があります。コンタクタは単に回路を開閉するだけでなく、その開閉時に発生するアーク(放電)を安全かつ確実に消弧する能力が求められるため、電源の種類に応じた設計が不可欠です。

3.1 交流と直流の電気的特性

交流(AC)と直流(DC)は、電流の流れる方向と電圧の変動パターンが根本的に異なります。この違いが、コンタクタの内部構造、特に制御コイルの設計と主接点のアーク消弧能力に大きな影響を与えます。

特性

交流 (AC)

直流 (DC)

電圧・電流の変動

周期的に向きと大きさが変化する(一般的に正弦波)

向きと大きさが一定

ゼロクロス点

周期的に電圧・電流がゼロになる点が存在する

存在しない

アーク消弧

ゼロクロス点でアークが自然に消えやすい特性を持つ

アークが持続しやすく、消弧が非常に困難

リアクタンスの影響

コイル(誘導性)やコンデンサ(容量性)の影響(リアクタンス)を強く受ける

抵抗成分のみが影響(定常状態)。開閉時は誘導性成分が大きく影響

誘導性負荷開閉時の挙動

突入電流、力率の考慮が必要。ゼロクロスでアークは消えやすい

開閉時に非常に大きな逆起電力(サージ)が発生し、アークが持続しやすい

ACコンタクタは、交流のゼロクロス点を利用してアークを消弧する設計が可能です。一方、DCコンタクタはゼロクロス点が存在しないため、発生したアークを持続させないための強力なアーク消弧機構(磁気吹き消しなど)が必要となります。また、DC回路で誘導性負荷を開閉する際には、コイルに蓄えられたエネルギーが逆起電力として放出され、非常に大きなサージ電圧とアークを発生させるため、これに対応できる設計が必須となります。

3.2 負荷の種類とコンタクタへの影響

コンタクタが接続される負荷の種類によって、開閉時の電気的な挙動が大きく異なります。この負荷特性を考慮せずにコンタクタを選定すると、接点の溶着、早期摩耗、絶縁破壊、ひいてはコンタクタの焼損や周辺機器への悪影響を引き起こす可能性があります。

負荷の種類

特徴

ACコンタクタへの影響

DCコンタクタへの影響

抵抗性負荷

(例:ヒーター、白熱電球)

電圧と電流が同相で、突入電流も比較的小さい。

比較的開閉が容易。定格電流内で選定すれば問題は少ない。

比較的開閉は容易だが、DC特有のアーク消弧能力は必要。

誘導性負荷

(例:モーター、ソレノイド、トランス)

電圧と電流に位相差が生じる。開閉時に大きな逆起電力が発生する。

モーターの始動時など、大きな突入電流の考慮が必要。アーク消弧はゼロクロスで比較的容易。

開閉時に発生する非常に大きな逆起電力によるアークが持続しやすく、接点へのダメージが極めて大きい。特殊なアーク消弧機構が必須であり、AC用よりも大きな容量のDCコンタクタが必要となる場合が多い。

容量性負荷

(例:コンデンサ、力率改善コンデンサ)

電圧と電流に位相差が生じる。充電時に瞬間的に大きな突入電流が流れる場合がある。

突入電流の考慮が必要。専用のコンデンサ用コンタクタが使用されることもある。

充電電流や放電電流の制御が必要。DC回路で容量性負荷を頻繁に開閉する用途は少ないが、その場合は突入電流対策が重要。

特に誘導性負荷の開閉においては、ACとDCでコンタクタに求められる性能が大きく異なります。DC回路でモーターなどの誘導性負荷を開閉する場合、コイルに蓄えられたエネルギーが一気に放出され、非常に強力なアークを発生させます。このアークを確実に消弧し、接点の損傷を防ぐためには、ACコンタクタとは異なる設計、特に強力な磁気吹き消し機構や長い接点間距離を持つDCコンタクタが不可欠となります。このような理由から、ACとDCの電源特性、および接続する負荷の種類を正確に把握し、それぞれに最適なコンタクタを選定することが、システムの安全性と信頼性を確保する上で極めて重要となるのです。

4. AC DCコンタクタ選定で失敗しないためのポイント

AC DCコンタクタの選定は、システムの安全性、信頼性、そして効率に直結する重要なプロセスです。適切なコンタクタを選ぶことで、故障のリスクを低減し、機器の寿命を延ばすことができます。ここでは、選定時に失敗しないための具体的なポイントを詳しく解説します。

4.1 使用する回路の電源種類を確認する

コンタクタ選定において、最も基本的な選定基準となるのが、使用する回路の電源種類です。ACコンタクタは交流回路に、DCコンタクタは直流回路にそれぞれ特化して設計されています。

これは、制御コイルの動作原理や主接点のアーク消弧能力が、交流と直流の電気的特性に合わせて最適化されているためです。したがって、選定の第一歩として、制御したい主回路の電源が交流(AC)なのか、直流(DC)なのかを明確に確認し、それとコンタクタの電源種類が一致していることを確認してください。

4.2 接続する負荷の種類と特性を把握する

コンタクタが接続される負荷の種類によって、コンタクタに求められる性能や耐久性が大きく変わります。負荷の種類には、主に以下のものがあります。

  • 抵抗負荷(ヒーター、白熱灯など): 電流の変化が比較的緩やかで、突入電流も小さい。

  • 誘導負荷(モーター、ソレノイド、トランスなど): 起動時に大きな突入電流が発生し、遮断時には逆起電力が発生する。特にモーター負荷は、起動・停止時の過酷な条件に耐える必要があります。

  • 容量負荷(コンデンサ、一部の電源回路など): 投入時に大きな突入電流が発生することがある。

特に、モーターなどの誘導負荷を制御する場合、突入電流や逆起電力に耐えうる設計のコンタクタを選ぶ必要があります。また、DC負荷の場合は、アークが切れにくいため、特にアーク消弧能力の高いDCコンタクタの選定が不可欠です。

4.3 定格電圧と定格電流の選定

コンタクタの定格電圧と定格電流は、安全かつ安定した動作を保証するための最も重要な指標です。

4.3.1 定格電圧の確認

コンタクタには、主回路の定格電圧と、制御コイルの定格電圧の2種類があります。これらを混同しないよう注意が必要です。

  • 主回路の定格電圧: 接続する主回路の電圧(例:AC200V、DC24Vなど)と、コンタクタの主接点の定格電圧が一致しているかを確認します。

  • コイルの定格電圧: コンタクタを動作させるための制御電源の電圧(例:AC100V、DC24Vなど)と、コンタクタのコイルの定格電圧が一致しているかを確認します。

4.3.2 定格電流の選定

接続する負荷の最大電流(定常電流だけでなく、起動時の突入電流も考慮)が、コンタクタの定格電流以下であることを確認します。一般的には、定格電流に十分な余裕を持たせることが推奨されます。特に誘導負荷の場合、定常電流の数倍の突入電流が流れることがあるため、これに耐えられる定格電流のコンタクタを選定することが重要です。

4.4 開閉頻度と寿命を考慮する

コンタクタの寿命は、開閉頻度に大きく左右されます。コンタクタには主に以下の2種類の寿命があります。

  • 電気的寿命: 主接点の開閉によってアークが発生し、接点が消耗することによる寿命です。開閉回数や電流値、負荷の種類に依存します。

  • 機械的寿命: コイルのON/OFF動作による可動部の物理的な摩耗による寿命です。開閉回数に依存します。

開閉頻度が非常に高い場合(例えば、1分間に何十回も開閉するような用途)は、長寿命設計のコンタクタや、高頻度開閉対応の製品を選ぶ必要があります。また、電気的寿命を延ばすためには、適切なアーク消弧能力を持つコンタクタの選定や、過電流からの保護も重要です。システムの運用計画に合わせて、定期的な点検や交換計画を立てることも考慮しましょう。

4.5 設置環境と保護等級

コンタクタの性能を最大限に引き出し、故障を防ぐためには、設置環境を考慮することが不可欠です。以下のような環境要因がコンタクタに影響を与えます。

  • 温度: 高温環境ではコンタクタの定格電流が低下したり、寿命が短くなったりする可能性があります。

  • 湿度: 高湿度環境では絶縁劣化や金属部品の腐食が進むことがあります。

  • 粉塵や水滴: 接点や可動部に異物が侵入すると、動作不良や短絡の原因となります。

  • 腐食性ガス: 化学工場などでは、接点や金属部品が腐食し、接触不良や故障を引き起こす可能性があります。

  • 振動や衝撃: 頻繁な振動や衝撃は、機械的な摩耗を早めたり、接続部の緩みを引き起こしたりします。

これらの環境要因からコンタクタを保護するために、IP(Ingress Protection)コードで示される保護等級を確認し、設置環境条件に適合した保護等級のコンタクタを選定する必要があります。例えば、屋外や粉塵の多い場所ではIP65以上の高い保護等級が求められます。

環境要因

考慮すべき点

推奨される対策/保護等級の例

高温

定格電流の低下、寿命の短縮

耐熱設計、十分な放熱スペース、強制冷却

高湿度

絶縁劣化、腐食

防湿処理、IP保護等級(例: IPx4以上)

粉塵

動作不良、短絡

密閉構造、IP保護等級(例: IP5x以上)

水滴/水没

短絡、故障

防水構造、IP保護等級(例: IPx5以上)

腐食性ガス

接点・金属部品の腐食

特殊コーティング、密閉構造

振動/衝撃

機械的摩耗、接続部の緩み

耐振動設計、防振対策

4.6 信頼できるメーカーと製品を選ぶ

コンタクタは電気設備の安全性と安定性を左右する重要な部品です。そのため、信頼性の高いメーカーの製品を選ぶことが非常に重要です。信頼できるメーカーは、製品の品質、技術サポート、供給体制において高い基準を満たしています。

選定時には、以下の点を考慮してメーカーや製品を選びましょう。

  • 実績と評判: 長年の実績があり、業界内で高い評価を得ているメーカー。

  • 品質管理: 厳格な品質管理体制を持ち、国際規格(ISOなど)に準拠した製品を製造しているか。

  • 技術サポート: 製品に関する技術的な問い合わせやトラブルシューティングに対応できるサポート体制があるか。

  • 製品ラインナップ: 必要な仕様(定格、機能、サイズなど)の製品が豊富に揃っているか。

  • 供給体制: 部品の供給が安定しており、万が一の故障時にも迅速な交換部品の供給が可能か。

日本国内で広く知られている信頼性の高いコンタクタメーカーには、三菱電機、富士電機、オムロン、パナソニック、東芝などがあります。また、海外メーカーではシュナイダーエレクトリック、シーメンス、ABBなども世界的に高い評価を得ています。これらのメーカーの製品は、厳しい試験基準をクリアしており、長期にわたる安定稼働が期待できます。

5. AC DCコンタクタ選定におけるよくある疑問

5.1 ACコンタクタをDC回路で使えるか?

結論から言うと、推奨されません。ACコンタクタをDC回路で使用することは、いくつかの深刻な問題を引き起こす可能性があります。

5.1.1 制御コイルの動作

ACコンタクタの制御コイルは、交流の誘導リアクタンスを利用してインピーダンスを形成し、適切な電流が流れるように設計されています。しかし、直流回路ではこのリアクタンス成分がないため、コイルの純粋な抵抗成分のみが電流を制限します。その結果、コイルに過大な電流が流れ、発熱や焼損に至る危険性が非常に高くなります。

5.1.2 主接点のアーク消弧能力

ACコンタクタの主接点は、交流のゼロクロス点(電流がゼロになる瞬間)を利用してアークを効率的に消弧するように設計されています。直流回路では電流が常に一定方向であるため、ゼロクロス点がなく、アークが切れにくい特性があります。これにより、接点の損傷、溶着、あるいはアークが消弧せずに火災につながるリスクが増大します。

したがって、たとえ一時的に動作したとしても、ACコンタクタをDC回路で使用することは、コンタクタ自体の寿命を著しく縮めるだけでなく、接続された機器やシステム全体に重大な損傷を与える可能性があり、極めて危険です。

5.2 DCコンタクタをAC回路で使えるか?

DCコンタクタをAC回路で使用することも、基本的にはできません

5.2.1 制御コイルの動作

DCコンタクタの制御コイルは、直流電圧に最適化されています。交流電圧を印加すると、コイルに交流電流が流れますが、コイルのインピーダンスが交流に対する抵抗成分のみとなり、過大な電流が流れてコイルが過熱、焼損する恐れがあります。また、交流の周波数によっては、コイルの励磁・消磁が繰り返され、チャタリング(接点の振動)が発生し、正常な動作が期待できません。

5.2.2 主接点のアーク消弧能力

DCコンタクタの主接点は、直流の継続的なアークを強制的に引き伸ばしたり、磁気的に吹き飛ばしたりするなどの強力なアーク消弧能力を持っています。しかし、交流回路、特に誘導性負荷や容量性負荷においては、電流の位相が電圧とずれるため、アーク消弧のタイミングが異なります。DCコンタクタは交流のゼロクロス点を利用しないため、交流のアークを適切に消弧できず、接点の短寿命化や故障の原因となります。

このように、ACコンタクタと同様に、DCコンタクタも設計された電源種類以外での使用は、性能の低下、故障、そして安全上の問題を引き起こすため、避けるべきです。

5.3 AC DCコンタクタの寿命を延ばすには?

コンタクタの寿命を最大限に延ばし、安定した動作を維持するためには、以下のポイントに注意することが重要です。

項目

詳細

適切な選定

使用する回路の電源種類(AC/DC)、定格電圧、定格電流、負荷の種類(抵抗性、誘導性、容量性)を正確に把握し、余裕を持った定格のコンタクタを選定します。特にモーターなどの誘導性負荷では突入電流が大きいため、十分な選定が必要です。

過負荷運転の回避

コンタクタの定格電流を超える電流を流したり、定格電圧を超える電圧を印加したりする過負荷運転は、発熱や接点の損傷を早め、寿命を著しく縮めます。

開閉頻度の管理

コンタクタには機械的寿命と電気的寿命があります。特に電気的寿命は開閉頻度と負荷電流に大きく依存します。定格の開閉頻度を超えないように設計し、頻繁なオンオフが必要な場合は、より耐久性の高い製品や別の制御方式を検討します。

サージ対策

コイルの開閉時や誘導性負荷の遮断時には、大きなサージ電圧が発生し、コンタクタや周辺機器に悪影響を及ぼすことがあります。サージアブソーバやバリスタなどのサージ吸収素子を設置することで、コイルや接点の劣化を抑制し、寿命を延ばすことができます。

適切な設置環境

コンタクタは、指定された周囲温度、湿度、粉塵、振動などの環境条件内で使用することが重要です。高温多湿や粉塵の多い場所、振動が激しい場所では、絶縁劣化や接点不良を引き起こしやすくなります。適切な保護等級のエンクロージャに収納し、換気を確保することが望ましいです。

定期的な点検と清掃

定期的にコンタクタの目視点検を行い、接点の摩耗や焼け、コイルの変色、端子部の緩みなどを確認します。粉塵の堆積は絶縁性能の低下を招くため、定期的な清掃も有効です。異常が見られた場合は、早めに交換を検討します。

適切な配線と端子処理

配線は適切な太さのケーブルを使用し、端子部は確実に締め付けます。配線不良や端子部の緩みは、接触抵抗の増加による発熱や、誤動作の原因となり、寿命を縮める可能性があります。

6. まとめ

ACコンタクタとDCコンタクタは、制御コイルの動作原理、主接点のアーク消弧能力、そして適用される電圧・電流範囲において決定的な違いがあります。この根本的な差異は、交流と直流それぞれの電気的特性に起因しており、特にアーク消弧能力は回路の安全性に直結するため、非常に重要です。誤ったコンタクタを選定すると、機器の故障、短寿命化、さらには火災などの重大な事故につながる可能性があります。そのため、使用する電源の種類、接続する負荷の特性、定格電圧・電流、開閉頻度などを正確に把握し、用途に最適なコンタクタを選ぶことが、安全で信頼性の高いシステムを構築するための不可欠な要素となります。安易な代用は絶対に避け、正しい知識に基づいて選定を行いましょう。


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