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コンタクタとは何か?電気回路の安全を守る重要部品を基礎から解説
「コンタクタとは何か?」この疑問に答える本記事では、電気回路の安全と効率的な制御に不可欠な重要部品であるコンタクタについて、その基本的な定義から役割、構造、種類、そして具体的な活用事例まで、初心者にも分かりやすく基礎から徹底解説します。モータや高容量機器の開閉制御、回路保護に貢献するコンタクタの全貌を理解し、電気設備の設計・運用に役立つ知識を習得できます。
1. コンタクタとは何か その基本的な定義
コンタクタは、電気回路の開閉を行うための電磁開閉器の一種です。特に、電磁石の原理を利用して主回路の接点を開閉する装置として定義されます。日本語では一般的に「電磁接触器(でんじせっしょくき)」とも呼ばれ、JIS(日本産業規格)においてもそのように規定されています。
その主な役割は、モータやヒータ、照明設備など、比較的大容量の負荷が接続される主回路の電流を、安全かつ確実にON/OFF制御することにあります。手動での操作だけでなく、制御回路からの信号によって遠隔で、あるいは自動的に開閉できる点が大きな特徴です。
1.1 コンタクタの役割と一般的な呼称
コンタクタは、産業分野の様々な電気設備において不可欠な部品です。その機能と呼称について詳しく見ていきましょう。
1.1.1 電磁力で電気回路を開閉する装置
コンタクタの最も基本的な機能は、電磁石の力を用いて電気回路の接点を開閉することです。制御用の小さな電流を流すことで電磁石が動作し、それによって主回路の大電流を遮断したり、接続したりします。この電磁力による動作が、手動スイッチでは困難な高頻度な開閉や遠隔操作を可能にしています。
1.1.2 「電磁接触器」としてのJIS定義
日本国内では、コンタクタは「電磁接触器」という名称で広く認知されており、JIS C 4501「電磁接触器及び電磁開閉器」などの規格によってその性能や試験方法が定められています。
1.2 コンタクタが使用される主な場面
コンタクタは、その堅牢性と信頼性から多岐にわたる分野で利用されています。
1.2.1 大電流・高電圧回路の制御
特に、産業用モータ、ヒータ、ポンプ、コンプレッサなど、大きな電流を必要とする機器のON/OFF制御に欠かせません。これらの機器を安全かつ効率的に稼働させるために、コンタクタが重要な役割を担います。
1.2.2 遠隔操作や自動制御への適用
工場やビルの自動化システムにおいて、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やセンサからの信号を受けて、自動的に機器の電源を投入・遮断する用途で広く利用されています。これにより、人手を介さずに複雑な制御を実現し、省力化や効率化に貢献します。
2. コンタクタが電気回路で果たす役割と重要性
コンタクタは単なるスイッチではありません。電気回路、特に高電圧や大電流を扱う回路において、安全かつ効率的な電力供給と制御を実現するための極めて重要な役割を担っています。その機能は、機器の保護からシステムの自動化まで多岐にわたり、現代の産業やインフラには欠かせない存在です。
2.1 モータや高容量機器の開閉制御を担うコンタクタ
コンタクタの最も主要な役割の一つは、モータやヒーター、ポンプ、コンプレッサー、大型照明といった高容量の電気機器の電源回路を安全かつ確実に開閉することです。これらの機器は起動時に大きな電流(突入電流)が流れたり、運転中に定格電流以上の電流が流れ続けたりすることがあります。手動のスイッチでは対応が難しい、あるいは危険なこれらの大電流回路を、コンタクタは遠隔から、または自動的に制御することを可能にします。
例えば、工場における三相誘導モータの起動・停止、あるいは正転・逆転の切り替えには、複数のコンタクタが組み合わされて使用されます。これにより、作業者は直接モータの電源に触れることなく、安全な場所からモータの運転を制御できます。また、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)や各種センサーと連携することで、複雑な自動制御システムの中核として機能し、生産ラインの効率化や省力化に大きく貢献しています。
コンタクタが果たす開閉制御の役割と重要性を以下にまとめます。
2.2 電気回路の安全保護に貢献するコンタクタ
コンタクタは単に回路を開閉するだけでなく、電気回路全体の安全保護にも大きく貢献します。特に、熱動形過負荷リレー(サーマルリレー)や不足電圧引き外し装置、地絡保護装置など、様々な保護装置と組み合わせて使用されることで、その保護機能は最大限に発揮されます。
例えば、モータが過負荷状態になった際、サーマルリレーがそれを検知し、コンタクタのコイルへの電流を遮断することで、主回路を開放します。これにより、モータの焼損や配線の過熱を防ぎ、火災や感電事故のリスクを低減します。また、電源電圧の低下や停電時にも、コンタクタが自動的に回路を開放することで、機器の誤動作や再通電時の突入電流による損傷を防ぐことができます。
このように、コンタクタは異常発生時に迅速に回路を遮断する「番人」として機能し、人命の安全確保、高価な機器の損傷防止、そしてシステムのダウンタイム最小化に不可欠な役割を担っています。これは、単に機器を動かすだけでなく、安全で信頼性の高い電気設備を構築する上で、コンタクタが持つ非常に重要な側面です。
コンタクタが果たす安全保護の役割と重要性を以下にまとめます。
3. コンタクタの主要な構造と動作原理
コンタクタは、その内部に組み込まれた複数の部品が連携し、電気的な信号によって回路の開閉を行う精密な装置です。その中核をなすのは、コイルが生み出す電磁力と、それによって動作する接点機構です。ここでは、コンタクタがどのように構成され、どのような原理で動作するのかを詳しく解説します。
3.1 コイルと電磁力の働き
コンタクタの動作原理の根幹は、コイルに電流を流すことで発生する電磁力にあります。コンタクタ内部には、電線を巻いたコイルが内蔵されており、このコイルに制御電源(操作電源)から電流が供給されると、電磁石となります。この電磁石の磁力によって、可動鉄心(プランジャー)が固定鉄心へと引き寄せられます。
この可動鉄心の動きが、コンタクタの接点部分に伝達され、主回路や制御回路の開閉が行われます。コイルへの通電を停止すると、電磁力がなくなり、内蔵された復帰ばね(スプリング)の力によって可動鉄心は元の位置に戻り、接点も元の状態に戻ります。このように、コイルへの通電・非通電によって、コンタクタは電気回路のON/OFFを瞬時に、かつ確実に制御しています。
なお、コンタクタのコイルには、交流(AC)用と直流(DC)用があります。交流用コイルの場合、磁力の変動による振動(唸り音)を抑えるために、「くま取りコイル」と呼ばれる短絡環が固定鉄心に組み込まれているのが一般的です。
3.2 主接点と補助接点の役割
コンタクタは、その用途に応じて「主接点」と「補助接点」という2種類の接点を持っています。それぞれの接点は異なる役割を担い、電気回路全体の機能と安全性を確保するために不可欠です。
3.2.1 主接点の役割と特徴
主接点は、モータやヒーター、照明設備などの大容量機器に流れる主回路の電流を直接開閉する役割を担います。そのため、大電流に耐えうるように、高い導電性と耐アーク性を持つ材質(例:銀合金)で作られています。また、電流を遮断する際に発生するアーク(火花放電)を迅速に消滅させるための「アーク消弧装置(アークチャンバー)」が組み込まれているのが特徴です。一般的に、三相交流モータの制御には3極の主接点を持つコンタクタが用いられます。
3.2.2 補助接点の役割と種類
補助接点は、主回路ではなく、制御回路や信号回路で使用される接点です。主接点の開閉状態を検出したり、他の機器との連動制御(インターロック)、自己保持回路の構成、表示灯の点灯などに利用されます。主接点とは異なり、流れる電流は小さいため、アーク消弧装置は通常備えられていません。
補助接点には、その動作状態によって主に以下の2種類があります。
一部のコンタクタでは、共通端子を持つ「c接点(切換接点)」も利用可能で、これはa接点とb接点の両方の機能を持つものです。補助接点は、コンタクタの機能性を高め、複雑な自動制御システムを構築する上で非常に重要な役割を果たします。
4. コンタクタの種類と選定のポイント
4.1 電磁接触器としてのコンタクタの種類
コンタクタは、その基本的な動作原理から「電磁接触器」とも呼ばれます。様々な用途や環境に対応するため、多種多様なコンタクタが存在します。主な分類軸は、制御電源の種類、主接点の極数、定格電流、そして付加機能の有無などです。
最も基本的な分類は、コンタクタ内部のコイルを励磁する制御電源が交流(AC)か直流(DC)かによるものです。交流用コンタクタは、商用電源の交流電圧を直接利用してコイルを駆動します。一方、直流用コンタクタは、直流電源でコイルを駆動し、直流回路の開閉に適しています。特に、太陽光発電システムやバッテリー駆動の設備など、直流電源が主流の場面で利用されます。
また、開閉する主回路の数に応じて、主接点の極数も異なります。一般的には2極、3極、4極のコンタクタが広く用いられ、モータ制御では3相交流に対応する3極タイプが標準的です。さらに、制御対象の電流容量によって、小容量から大容量まで幅広い定格電流の製品が提供されています。
特殊な機能を持つコンタクタとしては、以下のようなものが挙げられます。
4.2 コンタクタ選定の基礎知識
コンタクタを選定する際には、その機能や特性が使用する回路や負荷に適合しているかを慎重に検討する必要があります。誤った選定は、機器の故障や事故、システムの停止につながる可能性があるため、以下のポイントを総合的に考慮することが重要です。
4.2.1 主回路の条件と負荷の種類
コンタクタが直接開閉する主回路の定格電圧と定格電流は、最も基本的な選定基準です。特に、モータなどの誘導性負荷を制御する場合、始動時に定格電流の数倍にもなる突入電流が発生するため、この突入電流に耐えうる定格電流値を持つコンタクタを選ぶ必要があります。また、ヒータのような抵抗性負荷、照明のような容量性負荷など、負荷の種類によって開閉時の特性が異なるため、それぞれの負荷に最適な開閉容量を持つコンタクタを選定することが大切です。
4.2.2 制御回路の条件とコイル定格
コンタクタを動作させるための制御回路の電圧(コイル定格電圧)と電源の種類(AC/DC)も重要な選定ポイントです。制御盤内の制御電源電圧に合わせて、適切なコイル定格電圧のコンタクタを選びます。例えば、AC100Vで制御するならAC100Vコイル、DC24Vで制御するならDC24Vコイルのコンタクタを選びます。
4.2.3 開閉頻度と寿命
コンタクタの寿命は、機械的寿命(コイルの動作回数)と電気的寿命(接点の開閉回数)によって決まります。特に電気的寿命は、開閉する電流の大きさや負荷の種類、開閉頻度によって大きく変動します。頻繁にON/OFFを繰り返す用途では、耐久性の高い製品や、半導体コンタクタのような長寿命タイプを検討する必要があります。
4.2.4 周囲環境と保護構造
コンタクタが設置される周囲の環境も選定に影響します。高温多湿、粉塵が多い場所、腐食性ガスが発生する環境などでは、それに耐えうる保護構造(IP等級)を持つ製品や、特殊な表面処理が施された製品を選ぶ必要があります。また、振動や衝撃が大きい場所での使用も考慮し、堅牢な構造のコンタクタを選びます。
4.2.5 補助接点の要否と数
コンタクタには、主回路の開閉とは別に、シーケンス回路などで使用する補助接点が付いているものがあります。設備の複雑さや制御ロジックに応じて、必要な常開(a接点)および常閉(b接点)の補助接点数を確認し、適切なコンタクタを選定します。後から追加できる増設補助接点ユニットがある製品もあります。
4.2.6 付加機能の必要性
モータ保護のための熱動過負荷継電器(サーマルリレー)の有無、コイルのサージ電圧吸収機能、インターロック機構、表示灯、試験ボタンなど、用途に応じて必要な付加機能を持つコンタクタ、またはそれらを組み合わせた電磁開閉器として選定することも重要です。
4.2.7 設置スペースと取り付け方法
制御盤内の設置スペースに限りがある場合は、コンパクトなサイズのコンタクタを選ぶ必要があります。また、DINレール取り付けやネジ止めなど、取り付け方法も確認し、既存の設備や設計に適合するものを選びます。
4.2.8 適用規格
日本国内で使用する場合はJIS規格、海外に輸出する設備ではIEC、UL、CSAなどの国際的な安全規格に適合しているかどうかも確認が必要です。規格への適合は、製品の信頼性や安全性を保証する重要な要素となります。
5. コンタクタと関連部品との違い
電気回路には様々な部品が存在し、それぞれが特定の役割を担っています。コンタクタもその一つですが、似たような外見や機能を持つ部品と混同されることがあります。ここでは、特に間違いやすい「リレー」と「ブレーカー」との違いについて、それぞれの特徴と役割を比較しながら詳しく解説します。
5.1 コンタクタとリレーの違い
コンタクタとリレーは、どちらも電磁石の原理を利用して接点を開閉するという共通点を持っています。しかし、その主な用途と取り扱う電流容量において決定的な違いがあります。
コンタクタは主に動力回路や大容量の負荷を直接制御するために使用され、大きな電流を安全に開閉できるように設計されています。例えば、工場の大型モーターやヒーターのオン/オフ制御などが代表的な用途です。
一方、リレーは主に制御回路や信号回路で使用され、比較的小さな電流のオン/オフや信号の切り替えを目的としています。シーケンス制御や自動制御システムにおいて、センサーからの信号を受けて別の回路を動作させるといった用途に用いられます。リレーの接点容量はコンタクタに比べて小さく、直接大電流を流すことはできません。
5.2 コンタクタとブレーカーの違い
コンタクタとブレーカー(遮断器)は、どちらも電気回路の開閉を行う点で共通していますが、その主要な目的と機能が大きく異なります。
コンタクタの主な役割は、電気回路の「制御」です。つまり、オペレーターの操作や自動制御システムからの信号によって、必要な時に負荷へ電力を供給したり、停止させたりすることです。過電流や短絡など、異常が発生した際に回路を遮断する保護機能は、単体のコンタクタには通常備わっていません。そのため、過負荷保護が必要な場合は、別途サーマルリレーなどを組み合わせて使用します。
一方、ブレーカーの主な役割は、電気回路や接続された機器を「保護」することです。回路に過電流(過負荷)や短絡、漏電などの異常が発生した場合に、自動的に回路を遮断(トリップ)し、火災や機器の損傷、感電事故などを未然に防ぎます。ブレーカーは一度トリップすると、手動でリセット(復旧)する必要があります。
6. コンタクタの具体的な活用事例
コンタクタは、その堅牢性と信頼性から、多岐にわたる産業分野や設備において不可欠な役割を担っています。特に、大容量の電力制御や頻繁なON/OFF操作が求められる場面でその真価を発揮します。ここでは、代表的な活用事例を具体的に解説します。
6.1 工場設備のモータ制御におけるコンタクタ
工場では、生産ラインの自動化や機械の駆動に、数多くのモータが使用されています。特に、ポンプ、ファン、コンベア、工作機械などに用いられる三相誘導モータは、起動時に大きな電流が流れ、運転中も高容量の電力を消費します。これらのモータの運転・停止を直接手動スイッチで行うことは、スイッチの損耗が激しく、また安全性の面でも問題があります。ここでコンタクタが重要な役割を果たします。
コンタクタは、シーケンサ(PLC)や制御盤からの微弱な信号を受け、大容量のモータ電源を安全かつ確実に開閉します。これにより、モータの遠隔操作や自動運転が可能となり、生産効率の向上に貢献します。また、モータの過負荷保護のためにサーマルリレーと組み合わせて使用されることが一般的であり、異常電流を検知した際にモータへの電力供給を遮断し、機器の損傷や事故を未然に防ぎます。
具体的なモータ制御の例としては、正逆運転(モータの回転方向を切り替える)、スターデルタ起動(モータの起動電流を抑制する)などがあり、これらもコンタクタの組み合わせによって実現されます。
6.2 空調設備や照明設備の電源制御でのコンタクタ
ビル、商業施設、病院、学校などの大規模施設では、空調設備や照明設備が消費する電力量は非常に大きく、これらの設備を効率的に管理することは、省エネルギー化と運用コスト削減に直結します。コンタクタは、これらの大容量の電源を一括で制御するために広く利用されています。
例えば、業務用エアコンや大型の換気扇、ビル全体の照明システムなどは、時間帯や曜日、室内の状況に応じてON/OFFや運転モードの切り替えが必要です。コンタクタは、タイマーや温度センサー、照度センサー、あるいは中央監視システム(BEMS/BAS)からの信号を受けて、これらの機器への電力供給を自動的に制御します。これにより、無駄な電力消費を削減し、ピークカット運転による電力契約の最適化にも貢献します。
街路灯や屋外看板の照明制御においても、夜間の自動点灯・消灯や、災害時の一斉点灯など、遠隔からの集中制御にコンタクタが用いられています。コンタクタは、これらの環境下で長期間にわたる安定した動作が求められるため、高い信頼性が重視されます。
7. まとめ
コンタクタは、モータや高容量機器といった電気回路の開閉を安全かつ確実に行う上で不可欠な部品です。その電磁力による動作原理と、主接点・補助接点の組み合わせにより、回路の制御だけでなく、過負荷や短絡からの保護にも貢献します。リレーやブレーカーとは異なる独自の役割を持つため、適切な選定が重要です。工場設備、空調、照明など、多岐にわたる分野でコンタクタが活用されるのは、その安全性、信頼性、そして自動化への貢献が現代の電気設備において不可欠であると結論付けられるためです。
企業情報
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